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曇空文庫「社畜牧場」

時は21世紀。
さいばー偉いじゃんと会社では、新たなる家畜サービスを開始した。
それは「社畜牧場」という名前のサービスである。社長に逆らう社員と、そうでない社員を手軽に見分けることが可能だ。
社員の売り上げや業績だけでなくメールの内容をチェックし誰と誰がどういう関係なのかもすぐに分かるような画面設計になっている。

そして翌日

素晴らしいサービスにたくさんのコメントがついたのだった。
社員の顔写真だけでなく、これまでの業績を元に目的達成までにかかった時間などを各種アイコンで示すようになっている。仕事が早い写真はチーターなど脚の速い動物に、達成までに時間がかかる写真はナマケモノなど動作の遅い動物のアイコンが表示されるのだ。
業績の低い社員は下にプロットされるが、右側であれば社長には逆らうわけではない。
左側にプロットされた社員は要注意だ。特に左下にプロットされてしまった社員は最悪だ。業績も低く社長にも逆らうとみなされるため、リストラ対象になる可能性が高い。
上にプロットされれば業績には文句がないが、左側にプロットされてしまえば、やはり危険人物とみなされてしまう可能性が高い。特に最も左上にプロットされた社員は、会社を乗っ取られるのではないかという危険性があるため、これもリストラ対象になってしまうかもしれないのだ。
メールのやりとりなどが発生するたびに画面は書き換えられる。これにより、誰が裏切ったのかもすぐに分かってしまう。社内で下手なメールは出さないように気をつけねばならない。どこに社長の目が光っているかわからないからだ。

自動リストラ通知

さらにシステムが改良されたようだ。
左下にプロットされた社員には自動的に通知が届く仕組みになった。これにより、自分がリストラ対象かどうか分かるようになり便利になった。
この通知は劇的な効果を上げた。この不景気にリストラされてしまえば路頭に迷ってしまう。誰もが社長に逆らってクビになることを恐れた。社畜牧場の画面では、みるみるうちに社員が右側に移動していった。

偽装メール

社員は社長より上手だった。社長への忠誠心を誓うようなメールを大量に社内で流し、忠誠度をアップさせた。社畜牧場システムはメール本文に含まれる単語に反応するため、それを利用したのだった。
これによりさいばー偉いじゃんと会社では、社員がみなイエスマンになるという社長にとっては願ってもないパラダイスが実現されたのである。

信用失墜

偽装メールで忠誠度を上げたが、実際には社員の忠誠度は下がっていった。社内の社畜牧場では皆がイエスマンだったが、裏サイトでは会社の内情が暴露され広く世間に知れ渡っていった。しかし、その事は社長に知らされることはなかった。
やがて、社長の耳によからぬ噂が入る。しかし、時すでに遅く会社の信用は失墜していた。
信用をなくした会社の末路は、これまでに見られたような結果にしかならない。そして、いつしか世の中から社畜牧場とともに消えていくのだった。