| 山本 喜朗 | 第9回 最優秀作品 | 殉忠と彫られし夫の墓碑銘を洗ひ続けし母の五十年 |
| 米窪 美和子 | 第9回 特別賞 | 夕ぐれは幼きころに還るらし米寿の母がそのははを恋 |
| 大川 亘 | 第9回 優秀作品 | 恩給を担保に入れて數ケ年貢ぎし学費子には明かさず |
| 五味 まき | 第9回 優秀作品 | 待望のコンバインを今日購いて即ち嫁がオペレーターとなる |
| 飯田 俟子 | 第9回 佳作 | ウインドのいまだ売れざるシャム猫が身を持て余すごとき欠伸す |
| 出田 節子 | 第9回 佳作 | 一面に夕すげ咲く野の遙か吹き来る風に湿りゆく髪 |
| 岩橋 千代子 | 第9回 佳作 | 混み合ひし車内に射し込む夕つ日がしばし捉ふる男の子のピアス |
| 久保田 富美子 | 第9回 佳作 | 透明の花瓶の中の小宇宙ポトスの白根自在にのびる |
| 坪田 綾子 | 第9回 佳作 | 突然に逢ひたいなどと言って来る電話の向こうの君遠過ぎる |
| 永井 一夫 | 第9回 佳作 | ふたたびは田には戻らぬ休耕の峽の棚田に野兎の住みつく |
| 時里 作治 | 第9回 入選 | 戦死せる友の履歴をひとりひとり碑の裏に読む八月十五日 |
| 阿部 一直 | 第9回 入選 | 履歴書も要らずに父を継ぎて来て農衣の似合う老となりたり |
| 小林 正人 | 第9回 入選 | 夕べしらず広報塔の子守歌梨の咲く段丘渡りきぬ |
| 近藤 喜代子 | 第9回 入選 | いつはりの優しさもちて添ふときも姑は感謝の眼差に応ふ |
| 新国 洋子 | 第9回 入選 | 十五夜のこの月遠く病む孫も看取りゐる娘も見つつ居らむか |
| 原田 松子 | 第9回 入選 | 農を疎み若人去りし山峡に老い等奏でる祭り笛ひびく |
| 村岡 八重子 | 第9回 入選 | 智恵遅き児が飼い始めし鵜のうみし卵の温もりをいう |
| 横山 あき子 | 第9回 入選 | 地球上この一点は吾が物と稲植ゑつづけ其処より出でず |
| 小沢 喜予香 | 第9回 入選 | 無人駅いくつか過ぎてふる里の駅に降りたつ見知らぬ人と |
| 水野 洋子 | 第9回入選 | 神の手に導かれざるや生れし亀の海に届かぬ足あと残す |
| 伊藤 豊子 | 第9回 奨励賞 | 農継がぬ若者なれど雨乞いの蓑着て踊る輪の中にゐる |
| 加藤 江美 | 第9回 奨励賞 | 愛憎をなつかしみつつ語りあふ夫逝かしめし三人の女 |
| 西田 千恵子 | 第9回 奨励賞 | サリンガスの発生の謎解けたけれど衰え著き吾が眼もどらず |
| 藤松 理碩 | 第9回 奨励賞 | 無縁墓地僧侶の撒きし餞米を後下りに蟻が引きゆく |
| 山崎 けい子 | 第9回 奨励賞 | 氷わり蒔付けしたる稲苗を雪山写す田の面に植ゑゆく |
| 山本 正子 | 第9回 奨励賞 | 燭消えし灯篭ひとつ流れきぬ群れを離れてしばし漂う |