| 五十嵐 夏美 | 第10回 最優秀作品 | 同年の友の婚礼に招かれし知恵遅き子のネクタイ結ぶ |
| 姫宮 秋好 | 第10回 特別賞 | まさきくて還らばともに新しき国作らむと誓ひとものを |
| 上野 恭子 | 第10回 優秀作品 | かのときも空蒼かりし「日本のいちばん長い日」半世紀過ぐ |
| 藤原 益子 | 第10回 優秀作品 | 処暑の日に灼ける舗装路を盲導犬は足踏みしつつ信号を待つ |
| 小野 承子 | 第10回 佳作 | 日本列島にあらぬ日本に生まれたるわれはどこかで日本を疎む |
| 中村 重義 | 第10回 佳作 | 死ののちはわれの柩に添へられむ眼鏡のくもり丹念に拭く |
| 新国 洋子 | 第10回 佳作 | 己がために縫ひし襁褓か子のあらぬ姉逝きしあとの箪笥より出づ |
| 根橋 ヒロミ | 第10回 佳作 | 千草の青き香りと温もりをすげにまるめて小屋にしまいぬ |
| 古谷 友一 | 第10回 佳作 | 命得て今年の蝉の声を聞く短き命ひたすらに鳴く |
| 向山 かな子 | 第10回 佳作 | お日さまを毎朝ぱくりと食べまする すずしい顔で答ふる百歳 |
| 伊藤 愛子 | 第10回 佳作 | ガリバーの靴の如きを履く孫ら集ひてわが家の玄関狭し |
| 有賀 愛 | 第10回 入選 | 夕焼けをほめいる声の聞こえきて螺旋階段を人の降りくる |
| 磯部 初江 | 第10回 入選 | 阿夫利嶺の夕映えを背に五十年勤めし夫が職終へて來る |
| 片岡 きち | 第10回 入選 | ながらへて誇らんものの何もなししみじみと見る我が太き指 |
| 神田 弥生 | 第10回 入選 | 空港の入国手続終えし娘と手話にて話すガラス隔てて |
| 近藤 三郎 | 第10回 入選 | 空たかく雲雀のこゑはただよへり草ことごとくやさしく咲けば |
| 三澤 深 | 第10回 入選 | 精一杯のわれの応援スタンドに背番号なき子の夏終わる |
| 時野 恭 | 第10回 入選 | 夫の髪薄くなりしと詠む妻の染めたる髪も薄しと思ふ |
| 熊切 なか | 第10回 入選 | タイ人の嫁の希望もとり入れて建てし新居に今宵吾も寢る |
| 岩本 幸穂 | 第10回 入選 | 代金を受けつ渡しつ様々の手と付き合ひて今日もレヂ打つ |
| 岡村 厚子 | 第10回 入選 | なんとなく気になるあなたのそばにいて風鈴揺らす風になりたい |
| 小口 秀子 | 第10回 奨励賞 | 園児等はしだれ桜に手をのばす天よりの幸受けるが如く |
| 清田 せい | 第10回 奨励賞 | 末期癌なれどかく美しき表情す友にしばしを励まされをり |
| 栩本 澄子 | 第10回 奨励賞 | 人生に疲れましたと命断ちし少女は如何な生を経にけむ |
| 細井 静史 | 第10回 奨励賞 | 蝉の声この夏わきて少なきを地震奔りたる街に見上ぐる |
| 長谷川 武子 | 第10回 奨励賞 | たまさかに信号機待ちの吾が前を社名入り車の息子が見て過ぐる |
| 伝田 はつの | 第10回 奨励賞 | 左肩すこし落として歩む娘の重き荷物のひとつかわれも |
| 柳澤 和子 | 第10回 奨励賞 | この空の続く果てに戦うあり餓死あるを講義のあとに付け足す |