| 原 拓夫 | 第14回最優秀賞 | 八億の飢餓線上の人々のとうもろこしを今日も牛にやる |
| 宮本 司 | 第14回特別賞 | 日の丸に光と影のありし世を生き来て青き空を見つむる |
| 岡崎 祥枝 | 第14回優秀賞 | 母の絵のモデルとなりてをさな子は小さきうさぎを神妙に抱く |
| 吉岡 弥寿子 | 第14回優秀賞 | むくろなほ華やぎてゐる黄揚羽を一連(ひとつら)の蟻かかげて運ぶ |
| 栩本 澄子 | 第14回優秀賞 | 白もくれん祝祭のごと咲き溢れあかるき明日をふと錯覚す |
| 橋本 雨聲 | 第14回優秀賞 | 啄木鳥の古木に彫りしまろき穴ひとの覗けぬ幸せが棲む |
| 伊藤 ツイ | 第14回入選 | 明日は大腸の手術を受けむわが夫の不在投票を静かに見守(まも)る |
| 岸田 千恵 | 第14回入選 | たはやすく是非を言へねど介護保険の歪みの記事は入念に読む |
| 小林 良子 | 第14回入選 | ゆるぎなく緑なしたる山やまの祝盃のごと暁(あかとき)の湖 |
| 中村 育 | 第14回入選 | 抱かるる子供が眠り抱きいる母が眠りて車内静まる |
| 塩原 勝 | 第14回入選 | おうおうと級友(とも)の童顔浮かびきてにぎるその手の固く分厚き |
| 丸山 こう | 第14回入選 | エンデバーと交信をする子等のゐて吾は亡き娘と決めし星みる |
| 田島 美寿々 | 第14回入選 | どうですか良い娘(こ)ですかと聞く息子OKサイン出せば微笑む |
| 増田 ヨシ | 第14回入選 | 求めたる木曽の焼印ある桶に水を満たせばその香やさしき |
| 菅井 明子 | 第14回入選 | 身の丈のいくばく先に目路あらむ蟻の錯誤を見守(まも)りかなしむ |
| 向井 靖雄 | 第14回入選 | 妻逝きて子との同居へ去らむ村七戸残りて夕べをともす |
| 木村 正雄 | 第14回佳作 | 強制労働ここに始まるとふ馬追の運河六千百間澱みて残る |
| 江口 猪佐雄 | 第14回佳作 | じいちゃんの顔を画いたと帰り来し父なき孫が迎う父の日 |
| 及川 文子 | 第14回佳作 | 底辺にかなしみありてひたひたと水位増しゆく夕暮れどきは |
| 千種 孝子 | 第14回佳作 | 幼子のせて保母が車掌の縄電車バッタにしゃがみあきつに止まり |
| 田中 初枝 | 第14回佳作 | 樹液はや動き初めたり剪定のキウイの創より光りて落つる |
| 中沢 保雄 | 第14回奨励賞 | 桑畑も桑の林となりゆきて狸住みつく村に老いゆく |
| 飯田 俟子 | 第14回奨励賞 | 透明な心はいかに軽からむガラスの向こうの小さな水母 |
| 岩渕 当子 | 第14回奨励賞 | 木曽馬の種(しゅ)を保つ雄(おす)どっしりと太き脚もて土を踏みしむ |
| 内田 秀子 | 第14回奨励賞 | 蘆雪の魚を見しあとは清六のはみ出しし菊の絵をいとおしむ |
| 大寺 美也子 | 第14回奨励賞 | 魂の相寄るるさまに亡弟(おとうと)と亡母(はは)の流燈添いて流るる |
| 大堀 静 | 第14回奨励賞 | 朝々をわが枕辺に鉦打ちて仏壇をろがむ妻を疎みぬ |
| 小沢 恵美子 | 第14回奨励賞 | 畠隅に天水たよりの仮設池祭ですくひし金魚が泳ぐ |
| 小野 さと子 | 第14回奨励賞 | 優曇華をくさかげろうの卵だと知りたる驚き孫と住まいて |
| 角 よし子 | 第14回奨励賞 | 退院の友より届きし絵手紙の赤きトマトが笑ってゐます |
| 小松 かつ子 | 第14回奨励賞 | 名刺には社長・専務と刷りあれど零細企業のわたし等夫婦 |
| 五味 達雄 | 第14回奨励賞 | 白寿まで十九年の未来ありしたたかに生きて死なむと思ふ |
| 塩原 すみ子 | 第14回奨励賞 | 十五枚こはぜの地下足袋老いの足に穿きてきりりと今朝も立ちたり |
| 下村 親子 | 第14回奨励賞 | 手術して明るくなりし右の目に梅雨の晴れ間の青葉が光る |
| 新谷 秀子 | 第14回奨励賞 | 明日の天気また崩るるか鴉らの不協和音が森をゆさぶる |
| 新国 洋子 | 第14回奨励賞 | 炎天の庭に寒冷紗張りてゆく夫の脚立を両(もろ)手で支ふ |
| 丹羽 雅公 | 第14回奨励賞 | さわさわと山の青葉の枝太く揺るる画面にチャンネルを置く |
| 沼田 雅子 | 第14回奨励賞 | 「昭和」またはるけくなりぬ梅雨寒の御用邸弔問帳に文字ととのはず |
| 原 則子 | 第14回奨励賞 | 給食は漆の匂ふ器なり孫等と食す祖父母参観日 |
| 藤井 早苗子 | 第14回奨励賞 | やさしくね・まあるく両手で包むのと幼に雀のひなを渡しぬ |
| 藤掛 静子 | 第14回奨励賞 | 老い二人の明け暮れなれば畑仕事に夫持ちて行く携帯電話 |
| 藤森 ふきゑ | 第14回奨励賞 | 湖の泥を入れし先祖の労苦滲む田に休耕の立札を打つ |
| 古橋 満枝 | 第14回奨励賞 | ティッシュ添へてドナーカード手渡さるまともな臓器吾は持たぬに |
| 吉田 佳峯 | 第14回奨励賞 | 吾のまつ森の泉に来ませぬか腫れて眠れぬ足をいやしに |
| 水野 洋子 | 第14回奨励賞 | 真夜中の授乳も襁褓の取り換えもすべてうれしと笑む娘となりぬ |
| 宮坂 喜美子 | 第14回奨励賞 | 還り来ぬ夫が待ちゐる思ひして無言館の前に足震へ佇つ |
| 柳沢 澄 | 第14回奨励賞 | 吾が蹴る石蹴りの石子ども等は表情のなき貌で見ている |
| 吉澤 高光 | 第14回奨励賞 | 中空に汚れた地球映すごと皆既の月の赤く浮き居る |
| 米窪 千加代 | 第14回奨励賞 | 窓辺にて五月の風はうましといふ母の冷たき手の爪を切る |
| 米窪 三保 | 第14回奨励賞 | 複数の目を足元に意識せり松葉杖にて立つ投票所 |
| 大久保 カツ | 第14回奨励賞 | 抱かれて奈落の恋に落ちてゆく舞台くまなく紙吹雪舞ふ |
| 内田 泰子 | 第14回奨励賞 | 軒の端に吊す十薬かさかさと軽き音たつ梅雨明け近し |
| 岡田 克巳 | 第14回奨励賞 | パソコンにホームページとふわれの知を超えたるものと住める子の部屋 |
| 佐藤 吉美 | 第14回奨励賞 | 積む雪に雪雪雪が降り続く嗚呼勤勉な北国の雪 |
| 古田 嘉雄 | 第14回奨励賞 | サルナートの聖地は晴れて巡礼の五体投地は近づきがたく |
| 伊藤 鉄郎 | 第14回奨励賞 | 老いてなほ老後が不安と妻は言ふ老後はあの世と吾は思ふが |
| 平田 雅 | 第14回奨励賞 | 病床にかたく握れる母の掌をじゃんけんしつつ開かせてやる |
| 吉村 未知子 | 第14回奨励賞 | 「やまんば」は古典に出でし鬼なるに都会にあふれる娘ら「やまんば」 |
| 山越 孝子 | 第14回奨励賞 | 終の住処(すみか)をホームと決めて発つ父の細き身丈を雪せき立てる |
| ダグ ・ フリーマン | 第14回奨励賞 | 思い出す美しい山深みどり塩尻の日々やさしい心 |
| 設楽 トミ子 | 第14回奨励賞 | リュウマチのややに癒えしとセーターを洗ひしに赤くほてりくる掌や |
| 西本 登米子 | 第14回奨励賞 | 行く先はひとつと言へば二つあると地獄極楽風呂での会話 |
| 中村 史子 | 第14回奨励賞 | 二十世紀最後の宙(そら)の蝕甚に月は病みたりあかがねのいろ |
| 武田 和子 | 第14回奨励賞 | 家守り土に生き来し重みあり病みてふしたる父を抱けば |
| 小口 英子 | 第14回奨励賞 | 石畳のセーヌ河畔を闊歩する短身短足我もパリジェンヌ |
| 田仲 芳枝 | 第14回奨励賞 | 春が来て作大将となる老いら農の談議はこゑ張りのある |
| 杉浦 敏子 | 第14回奨励賞 | 掘り起こすじゃが芋の顔それぞれに似通うあれどえくぼの違い |
| 保科 富子 | 第14回奨励賞 | 後を継ぐ者もなけれど土深く今年もりんごの苗木補植す |
| 湯本 澄子 | 第14回奨励賞 | 廃屋のおどろに咲ける十薬の花明りして亡き人想ふ |
| 山原 淑恵 | 第14回奨励賞 | 湯のなかの排泄さえも褒められて力いっぱい赤児は伸びをす |