| 加納 喜美 |
第15回 最優秀作品 |
完熟の枇杷の包める種子硬しアンクル・トムは今も空腹 |
| 秋貞 和男 |
第15回 特別賞 |
起きぬけにかける眼鏡の冷たかり新たな世紀の雪降りはじむ |
| 雨宮かず子 |
第15回 優秀作品 |
ロボットの白い小犬が人間に可愛がられて尾をふりてゐる |
| 石川 路子 |
第15回 優秀作品 |
しゆんしゆんと泉のごとく湧き出でて病臥の朝の蝉鳴き始むる |
| 塩原 芳子 |
第15回 優秀作品 |
ジベレリン処理に無核となりし幾万の青き巨峰の房のつめたさ |
| 関本ゆきみ |
第15回 優秀作品 |
ビロードの小箱に遺るエメラルドわが知る母は常に畑打つ |
| 太田 芳子 |
第15回 佳作 |
くるくると廻れる歩道の風車 風だけが通る日曜の街 |
| 岡田 美紀 |
第15回 佳作 |
古里の海が恋しと啼く貝を水に沈めて落ち着かせたり |
| 小澤 享司 |
第15回 佳作 |
ほつほつと芽吹き初めたる青葦のはざまの水に夕日が光る |
| 小野さと子 |
第15回 佳作 |
ハンセン病勝訴となれど歌友ひとり駿河療養所にふかく老いたり |
| 吉田 満子 |
第15回 佳作 |
クヌギ葉に緑耀ふ繭結び天蚕は天竺の旅に出でしか |
| 秋山キヌ子 |
第15回 入選 |
太平洋をみて泣きし時あり若き日々浜辺を歩む我今米国市民 |
| 東 十八子 |
第15回 入選 |
デイサービスに出でゆく姑のブラウスにひまはりの花のブローチ付けやる |
| 稲部天津子 |
第15回 入選 |
出そびれし言葉呑みこむサイダーの泡はぶつぶつひとり言をいふ |
| 後藤 恵子 |
第15回 入選 |
母がまだそこに座っているような居間の炬燵に午後の陽の差す |
| 小林 啓作 |
第15回 入選 |
撃沈を生き残りたる現身にひたひたと八月十五日来る |
| 佐藤 悦子 |
第15回 入選 |
命守る形はやさし落し文の裡に託せし一粒の卵 |
| 武居 洋 |
第15回 入選 |
基地に依らずジュゴンと共に生きたしと名護の青年切々と説く |
| 宮下喜和枝 |
第15回 入選 |
部品組むくらしに慣れて二十年左手いつか利き手となりぬ |
| 柳沢さかえ |
第15回 入選 |
我が庭の巣箱に小鳥巣ごもらず隣のポストで雛かえりたり |
| 山里 和代 |
第15回 入選 |
ボタン付けの糸を切らむと口を寄すこの夫の胸に護られて来し |
| 秋山 尚子 |
第15回 奨励賞 |
をさな児の虐待死三件映されて画面はシャクヤクの花群となる |
| 雨宮つぎ子 |
第15回 奨励賞 |
あなうらに地熱の伝わる昼下り巨峰の畑に花の香は満つ |
| 安藤喜美子 |
第15回 奨励賞 |
耳遠きことも幸せか補聴器を外してねむる無音の世界に |
| 出後 幸子 |
第15回 奨励賞 |
生れたての青白き命翻らせバッタ翻る青芝の上 |
| 一丸 和幸 |
第15回 奨励賞 |
国敗れ変革の波に素直なりしわれら半世紀はたらきて来つ |
| 上田 昭子 |
第15回 奨励賞 |
見る方も見らるる方も親子なりベビーラッシュの動物園は |
| 大寺美也子 |
第15回 奨励賞 |
登りつめ登りつめたる噴水の秀・ほ先いっ気に崩れ失せたり |
| 大伴 拓 |
第15回 奨励賞 |
改革の獅子吼に憶ふ統べられて日本が世界と戦ひし日を |
| 小栗 八穂 |
第15回 奨励賞 |
事務服のまま夕餉の支度にとりかかり残業手当欲しい気がする |
| 尾崎 淳子 |
第15回 奨励賞 |
槐多の山はわが里の山亡き父の愛したる山なにも無き山 |
| 小田切佳子 |
第15回 奨励賞 |
日溜りの波止場にあそぶロシアの子古き冷蔵庫船に積む間を |
| 楠美 一路 |
第15回 奨励賞 |
廃材の投げ捨て場所でもあるまいし老人施設へぽんと置かれた |
| 久保 周子 |
第15回 奨励賞 |
機械の手伸びきて乳をしぼらるる牛の表情は画面にうつらず |
| 黒羽 紘子 |
第15回 奨励賞 |
孫ふたり帰りて静かテーブルに吾にと折りし鶴ふたつあり |
| 郷原 節子 |
第15回 奨励賞 |
平がなの稚き短歌教室にほたるのやうな愛といふ文字 |
| 腰原よ志子 |
第15回 奨励賞 |
海に向く外人墓地の夏草を戦がせ止まぬ海よりの風 |
| 佐藤 いく |
第15回 奨励賞 |
花つけし胡瓜の棚を朝々にのぞく愉しさ人には言はず |
| 佐藤 和子 |
第15回 奨励賞 |
兵の日に戻りし翁が挙手をして隊名告ぐる介護入浴 |
| 千賀すま子 |
第15回 奨励賞 |
むらきもの心に残る歌詠みたし生まぬ子三人育てて老いき |
| 田尾 英一 |
第15回 奨励賞 |
無視もせず立入りもせず同居する義母の手作り 草茶を飲む |
| 田口 昌樹 |
第15回 奨励賞 |
里山に山毛欅を植えたり豊かなる河と海とを取り戻すという |
| 田島 守 |
第15回 奨励賞 |
車窓より幼児のまま手を振りし施設に戻る三十路の吾子は |
| 田中 敦子 |
第15回 奨励賞 |
炎天に曲りし線路へ水掛くる人夫もレールも黒光りして |
| 田中 久子 |
第15回 奨励賞 |
畔の草刈られ清しき水田に水口越えて水は満ちくる |
| 田西 妙子 |
第15回 奨励賞 |
地境を諍いし人のおよそ逝き転作の田の柿根付きたり |
| 徳竹三三男 |
第15回 奨励賞 |
山羊が鳴きよしきりが啼き鶏が鳴く小学校の朝の始まり |
| 中神 米子 |
第15回 奨励賞 |
きらきらと不思議世界を見る目もてエレベーターより二歳児ら出づ |
| 長畑美津子 |
第15回 奨励賞 |
若き日をまぶしき日日と言へずをり老いて足らへる時となりても |
| 中村 蓉子 |
第15回 奨励賞 |
花咲けば花に寄り来る人の群大噴水に春の虹立つ |
| 中山 光一 |
第15回 奨励賞 |
栄転は名のみの任地降る雪に眼つむりて立つ寒立馬見ゆ |
| 原 やゑの |
第15回 奨励賞 |
ナイロンのひもを編みこみ巣づくりの小鳥はつひに卵を生まず |
| 原 ゆい子 |
第15回 奨励賞 |
牛も下り山小屋閉じてひっそりと販売機一つが秋陽をあびる |
| 平澤八千代 |
第15回 奨励賞 |
妹が生れ可愛いと言ひつつも寡黙となれる児を抱き締めやりぬ |
| 平野 誠 |
第15回 奨励賞 |
生意気なわが子二人と戦いの妻を想いて携帯をとる |
| 藤森ちづ子 |
第15回 奨励賞 |
父の日の園児の描きし似がお絵の歪みし顔が語りかけくる |
| 松沢つね子 |
第15回 奨励賞 |
車椅子の母は折り折りふり返り風を喜ぶひたすらな笑み |
| 松澤 敏子 |
第15回 奨励賞 |
木に咬まれ迫り上げられし石仏が の一部となりし歳月 |
| 松本 伸子 |
第15回 奨励賞 |
十二戸の吾が住む集落よ過疎すすみ二戸の灯りの消えてさみしき |
| 丸井 友子 |
第15回 奨励賞 |
欅よりこぼるる陽ざし濃く淡く鳩も私も水玉模様 |
| 丸山 こう |
第15回 奨励賞 |
覆ひ解く家の明りが外に洩るる夕べにききし盆踊りうた |
| 三宅 純子 |
第15回 奨励賞 |
カーソルを過去に戻すも消すキイは押さずにおこう生ある限り |
| 宮坂喜美子 |
第15回 奨励賞 |
二人目をみごもると聞く中國より嫁ぎ来し人の挨拶明るし |
| 宮島 泰正 |
第15回 奨励賞 |
満洲を拓き還りて故郷に荒れゆく田畑を見つゝ老いゆく |
| 山田 美枝 |
第15回 奨励賞 |
改革に痛み伴ふと為政者の胸はればいたむ弱者のひとり |
| 山本 修 |
第15回 奨励賞 |
手を出して力いっぱい握れよと若きナースは握力を診る |
| 吉岡弥寿子 |
第15回 奨励賞 |
飼ひ主に尻押されつゝ幾度かひざつく牛も売られてゆきぬ |
| 吉川 晴雄 |
第15回 奨励賞 |
草刈機は自在に動き野が軽くなりたるごとく明かるかりけり |
| 吉澤 貞子 |
第15回 奨励賞 |
桔梗の新芽またやられたり立ち日なれどまるまる肥えし夜盗虫ふみつぶす |