| 野明 芳 |
第16回 最優秀賞 |
生きているひと日ひと日を射貫くがに熱砂を徒歩ゆくブルカの女 |
| 丸山 定子 |
第16回 特別賞 |
桃の木は両手をひろげまつごとく見えてまぶしき母のふる里 |
| 大伴 拓 |
第16回 優秀賞 |
散骨が終の願ひの二人なる我はヒマラヤ妻はエーゲ海 |
| 北原 ます |
第16回 優秀賞 |
田畑守りてくるるを信じ子らのためわが家の農の歳時記を編む |
| 小林 喜代春 |
第16回 優秀賞 |
蛙鳴く疎開の街に住みつきて同窓会の下座に座る |
| 坂口 正子 |
第16回 優秀賞 |
大樽に夫と仕込みし新味噌の山吹色のかがやき掬ふ |
| 五味 達雄 |
第16回 佳作 |
物あふれ心貧しき世の末と憂ひつつ友もわれも老いゆく |
| 杉 寿夫 |
第16回 佳作 |
わたくしが疲れし以上に一日を苦使せし鍬をやさしく洗う |
| 高橋 ウタ子 |
第16回 佳作 |
たたなはる山ぬきて座す秋田富士頂き未だ銀の雪 |
| 多胡 智恵 |
第16回 佳作 |
ハナハトかサイタサイタかと暗号のように楽しむ老いの会話は |
| 帆足 敏子 |
第16回 佳作 |
シアトルも吾がふるさととなりゆきて霧やはらかに流るる朝 |
| 青木 豊子 |
第16回 入選 |
部屋とられ母もとられき杳き日の御蚕様のまゆ白かりき |
| 小松原 康生 |
第16回 入選 |
「健康に生きよ」と父がつけし名を五度の手術の同意書に書く |
| 桜井 冴子 |
第16回 入選 |
憂ひ多き世に生れたる内親王未来の光ともなふ如し |
| 清水 克哉 |
第16回 入選 |
難聴がすすめば聴こゆ若き日にきこえなかつた山笑ふ音 |
| 鈴木 陽子 |
第16回 入選 |
かつての夜読み聴かせたるを児が語り祖母はうとうと白雪姫となる |
| 高橋 なをみ |
第16回 入選 |
値下げ札貼られしショップの仔犬たちちぎれんばかりに尾を振りており |
| 田中 敦子 |
第16回 入選 |
さみどりの線を描きて六本の金属の手が田植してゆく |
| 番場 馨 |
第16回 入選 |
もういいよ塀にかくれるかあさんは見つかるようにいつまでも呼ぶ |
| 目黒 ミツル |
第16回 入選 |
年々に亡き夫と来し杉山の下草をいまひとり刈りゆく |
| 山本 喜朗 |
第16回 入選 |
サラブレッド育む牧の若きらの朝霧透るおはやうの声 |
| 赤池 功 |
第16回 奨励賞 |
五日制になりたる男の子長靴に祖父と連れ立ち大豆を蒔けり |
| 足立 安子 |
第16回 奨励賞 |
青年が孵化より世話するといふペンギンショーを終へても足元離れず |
| 天野 マスミ |
第16回 奨励賞 |
己がことついつい祈る胸うちを狛犬見透かし「吽」と言ひ呉る |
| 石川 志げ子 |
第16回 奨励賞 |
「止めないで」と過疎の人等に励まされ豆腐行商に老いし夫行く |
| 石橋 澄子 |
第16回 奨励賞 |
たつぷりと夕暮れまでの時はありてふてふハーブの花に戻り来 |
| 板橋 きみ江 |
第16回 奨励賞 |
飢餓いくど味はひし祖の貯へしや籾が屋根裏に芯まで煤けし |
| 伊藤 かえこ |
第16回 奨励賞 |
さまざまな表情もちて人ら過ぐ異界のような夏 横断歩道(ゼブラゾーン) |
| 伊藤 哲子 |
第16回 奨励賞 |
母在らばかかる日何を為し給う蝋梅の花に雪降りしきる |
| 大沢 濃子 |
第16回 奨励賞 |
ビニールプールの空気を抜けばシュルシュルと孫と遊びし夏が萎みぬ |
| 岡田 幸子 |
第16回 奨励賞 |
蟻一匹密航シタリと添へられし枇杷の礼状叔父より届く |
| 岡田 富美子 |
第16回 奨励賞 |
日に幾度下げし頭か水流を強め一気にシャワーを浴ぶる |
| 小口 三代子 |
第16回 奨励賞 |
読み聞かす絵本の中に我も居て数多の瞳きらきらひかる |
| 上條 孝子 |
第16回 奨励賞 |
里山の烏のストレスもろこしの苗ひとつづつ引き抜きてゐる |
| 上村 マキ |
第16回 奨励賞 |
苦しみていま脱皮する県政か梅雨の晴間を青空の見ゆ |
| 工藤 優子 |
第16回 奨励賞 |
咳をする夫のあとから郭公のひそと力まぬ朝の初声 |
| 黒田 和子 |
第16回 奨励賞 |
教室に齋藤史の声流れ描く大輪のあぢさゐにじむ |
| 黒羽 紘子 |
第16回 奨励賞 |
嫁の座も妻の座もなき独り居の狭庭に真紅の薔薇の咲き初む |
| 小出 加津代 |
第16回 奨励賞 |
幼子が昨日揺れゐしブランコにけふ揺れてゐる風の妖精 |
| 小嶋 ヒロヱ |
第16回 奨励賞 |
ふる里は亡き母のにほひゆふぐれに撫子の咲く河原のにほひ |
| 小林 勝 人 |
第16回 奨励賞 |
アイターンの若き夫婦と開店のパスタが話題の小さき山村 |
| 小林 静 |
第16回 奨励賞 |
ひたくれなゐの生とうたひし歌人逝くくれなゐ深き牡丹咲くとき |
| 佐藤 次郎 |
第16回 奨励賞 |
モナリザの笑みを湛えて史さんはピンクの縁の遺影の中に |
| 猿谷 たかよ |
第16回 奨励賞 |
二度わらしの夫の吹きゐる芦笛のかなしみこだます沼の夕映 |
| 下町 昭 |
第16回 奨励賞 |
「おかえり」のすぐあとに問う出航日遠洋漁業の基地に子ら待つ |
| 清水 はる |
第16回 奨励賞 |
山仕事に父の通ひしぶな谷の霧に乾かぬ落ち葉踏みゆく |
| 鈴木 二三江 |
第16回 奨励賞 |
病室のときとは別の顔をして出会いしナース若さ溢れる |
| 高梨 とし |
第16回 奨励賞 |
絶食をとかれて夫のふくみたる水に唇色差し初むる |
| 高橋 和子 |
第16回 奨励賞 |
サッカーのこの一体感を何とせんこれだけのパワーがあるではないか |
| 高橋 澄子 |
第16回 奨励賞 |
おおき息いつきに吐けばつもり居し思いもはれて青葉目に沁む |
| 武井 あさよ |
第16回 奨励賞 |
ぬくもりは背中の孫なりうれしくて山鳩の歌にもやさしさを聴く |
| 田舎中 勝子 |
第16回 奨励賞 |
声をあげ駆け寄りて来る幼孫胸のパンダと共に飛びつく |
| 塚本 俊子 |
第16回 奨励賞 |
十回も同じ話をするあなた十回頷き涙が滲む |
| 富岡 美枝子 |
第16回 奨励賞 |
湧き水に西瓜いくつも冷やされて子供みこしの掛け声近づく |
| 西本 登米子 |
第16回 奨励賞 |
連れ添ひて五十年余りいさかひも対話の一つか八十路みちづれ |
| 芳賀 辰雄 |
第16回 奨励賞 |
団栗がパンツを穿くと言ふ孫へ遺してやらむ青葉青空 |
| 花石 文雄 |
第16回 奨励賞 |
われはいま少女とふたり秋空へ昇りゆく透明エレベーター |
| 福沢 亀人 |
第16回 奨励賞 |
袖丈のやゝ短かきもよし受賞の日父の遺ししモーニング着む |
| 伏見 光子 |
第16回 奨励賞 |
車椅子マラソンランナー競いつつアカシア並木たんぽぽの丘 |
松山 子 |
第16回 奨励賞 |
他人の母なれど施設へ送る日は心みだるるヘルパーわれは |
| 丸山 せつ子 |
第16回 奨励賞 |
腰痛を気づかれぬやうゆく歩巾ウォーキングシューズは今朝下ろしたて |
| 水鳥 和美 |
第16回 奨励賞 |
少年の匂ひのこれる部屋にきて結露してゐる窓を開けたり |
| 水野 洋子 |
第16回 奨励賞 |
波打際を鴉はなれし今こそと生れたての亀を海へはこびぬ |
| 村山 百合子 |
第16回 奨励賞 |
ピンクはバラ天鵞絨のやうな赤はばら大輪の白を薔薇と書くべし |
| 山田 ふみ |
第16回 奨励賞 |
インコには限りなく優しき声かくる登校拒否児は硝子の向こう |
| 山本 修 |
第16回 奨励賞 |
度の少し合はねど吾の眼鏡にて妻は野良着のほころびなほす |
| 吉岡 弥寿子 |
第16回 奨励賞 |
夕空を鳴き渡りゆく白鳥の声冴えざえと雪野にひびく |
| 吉沢 節子 |
第16回 奨励賞 |
花冷えの村の図書館ひと気なくゆっくり探す老いの生き方 |
| 吉丸 はつ子 |
第16回 奨励賞 |
杳き日に戦野に匂ひしリラの花老いて札幌の園に見ゆる |