| 大 島 すみ子 | 第17回 最優秀 | ともに帰らむ退院の夫と歩みつつかく暖かし今生の手は |
| 黄 得 龍 | 第17回 特別賞 | 日本語で人と争う淋しさよ植民の日日をわれら育ちて |
| 牧 野 守 | 第17回 優秀賞 | 還暦を過ぎれば流れ解散のごときわびしさ逝く雲仰ぐ |
| 増 田 啓 子 | 第17回 優秀賞 | 青年が差しかけくるる傘のなか微かに汗の匂ふやさしさ |
| 秋 貞 和 男 | 第17回 優秀賞 | 老いわれを気遣う如くふり返りふり返りゆく犬に従う |
| 大 澤 一 枝 | 第17回 優秀賞 | 限りなき追憶の中に坐りをり夫の汗沁む服を手にして |
| 酒 井 富美江 | 第17回 佳作 | 父母ありき兄弟姉妹ありきふるさとのぬくもり沈めダム湖は湛ふ |
| 池 上 春 江 | 第17回 佳作 | 白鳥の餌付けの時間を知るならん鳶は群なし上空に待つ |
| 菅 野 宣 子 | 第17回 佳作 | 嬬恋より送り来しキャベツに同行の天道虫は羽を広げたり |
| 石 井 利 子 | 第17回 佳作 | 診療の一生見守りし掛時計亡夫の医院を毀つ形見に |
| 多 胡 智 恵 | 第17回 佳作 | 改築の屋根裏に煤けし籾一升飢餓に備へし祖の声聞ゆ |
| 山 田 静 | 第17回 入選 | 吾と娘の深くため息つく電話梅雨の日本・霧のロンドン |
| 清 水 和歌子 | 第17回 入選 | 盲目の夫を看送りその後に吾を召されよ産土の神 |
| 原 庸 夫 | 第17回 入選 | 探し疲れもとほり下る山腹に朝陽を反す失せし手斧は |
| 藤 曲 剛 志 | 第17回 入選 | お茶ですと持ちきし妻の亡くなりて畑より戻り蛇口より飲む |
| 安河内 崇 | 第17回 入選 | 夏至の日のキャンドルナイトに甦る樹皮の灯りで生きしシベリア |
| 西 本 登米子 | 第17回 入選 | 「有事立法」の陰に徴兵ただよふか戦死せし兄の小指ほどの遺骨 |
| 丸 山 せつ子 | 第17回 入選 | 殺むる子あやめられし児のある現梅雨暗き午後の新聞閉づる |
| 堅 木 一 進 | 第17回 入選 | 軍馬より軽き命と言われしが兵老いてまた終戦日迎う |
| 関 島 千 代 | 第17回 入選 | 向かふ山に風の吹くらしく槙の木の葉越しに沈む大き陽揺るる |
| 山 田 富 康 | 第17回 入選 | はろばろと赤彦の松に渡り来て今朝鳴き初めし郭公の聲 |
| 寺 澤 みよし | 第17回 奨励賞 | 余生など念頭になく春くればレタスの種子を夫は購う |
| 新 田 昌 子 | 第17回 奨励賞 | 木蓮の花ほどの靴を児は履きて木蔭に蟻の列を見ている |
| 北 沢 多恵子 | 第17回 奨励賞 | 渓流に釣りする夫と蕗を採る吾の鈴とが互に鳴り合う |
| 神 林 敏 夫 | 第17回 奨励賞 | 幾重にもタオルを巻きて少年から修学旅行みやげの吟醸酒がとどきぬ |
| 木 島 睦 子 | 第17回 奨励賞 | 赤い帽子青いシャツ着て九十二歳畔塗る夫の鍬の先光る |
| 中 村 育 | 第17回 奨励賞 | 馴染み来し雑木林を薙ぎ倒すチェンソーの音胸にひびかう |
| 森 田 小夜子 | 第17回 奨励賞 | 鎧ふもの持たざるわれは雨に濡れ柵の向かふの犀みつめをり |
| 等々力 眞 | 第17回 奨励賞 | フセインの像倒されて引かれ行き破壊兵器は其の影もなし |
| 嶋 田 千代子 | 第17回 奨励賞 | 若くして逝きたる姑の五十回忌塔婆抱けば木の香りして |
| 水 村 茂 雄 | 第17回 奨励賞 | 若き日に孫を乗せたる乳母車を足病みし妻が押して歩めり |
| 渡 辺 章 | 第17回 奨励賞 | 白壁に書き残したる初恋の人の名に遇う故里の町 |
| 武 智 洋 子 | 第17回 奨励賞 | 雪嶺に谺返らず吾が耳朶に雪踏む音のきしきしと鳴る |
| 野 村 瑞 穂 | 第17回 奨励賞 | 今日もまた料理番組多彩なり飢餓にさまよふ北鮮の子等 |
| 土 井 勝 美 | 第17回 奨励賞 | 祈るほかなき市民らかミサイルは熱砂の街に今日も飛来する |
| 阿 曽 富 成 | 第17回 奨励賞 | 逃避などかなわぬ我のかたわらに赤き電車を児らは走らす |
| 島 袋 盛 愼 | 第17回 奨励賞 | 第一線に弾丸運びし姫百合部隊一人は腕なく今日も生き継ぐ |
| 大 野 美恵子 | 第17回 奨励賞 | 舞ひ込みしきみが便りの嬉しさは沢に蛍が戻るに似たり |
| 大 伴 拓 | 第17回 奨励賞 | 誘致せし施設に一人の老としてデイサービス受く元町長は |
| 栩 本 澄 子 | 第17回 奨励賞 | 「わたしもね背負ってゐるの」でで虫に言問ふ端居あぢさゐの雨 |
| 北 原 靜 恵 | 第17回 奨励賞 | 育てしにあらず育ちし息子らの四人揃ひて現在壮年期 |
| 中 原 兼 彦 | 第17回 奨励賞 | 梢渡る五月の風のさはさはとネクタイ外し勤めををへぬ |
| 桂 川 りつ子 | 第17回 奨励賞 | 木の幹に残照のあり手で触れて明かるき温みたしかめてみぬ |
| 小 谷 貞 広 | 第17回 奨励賞 | デイケアの施設に今朝もゆく妻が旅立つときのごとく手を振る |
| 前 川 昌 子 | 第17回 奨励賞 | イラク戦争戦死の兵に父重なりすべなき悲しみふつふつと湧く |
| 井 原 文 子 | 第17回 奨励賞 | 億年の年かさねたる石筍の洞めぐりゆく人ら小さき |
| 新 藤 道 子 | 第17回 奨励賞 | ままごとの後に残れる皿ありて泥団子ふたついびつに乾く |
| 三 原 多まき | 第17回 奨励賞 | "商ひし手に毛筆を持つ夏の夜を遥けき王維、李白を恋ひつつ" |
| 三 橋 す ゑ | 第17回 奨励賞 | 働いた手だねと言はれ節高き指しみじみと見る夜長かな |
| 南 沢 豊 美 | 第17回 奨励賞 | 武者の骸あまた抱けるひとつ谷「葬沢」と小さき碑の立つ |
| 堀 木 つや子 | 第17回 奨励賞 | 寝言にまで部下に向かいて檄とばす企業戦士の夫の悲しき |
| 石 井 三佐子 | 第17回 奨励賞 | 戦争をなぜ阻止せざりしと若者言ふ参政権すら無かりし吾に |
| 時 野 恭 | 第17回 奨励賞 | 取水工事に涸れたる沢の水溜り森青蛙が卵塊を吊る |
| 石曽根 千代子 | 第17回 奨励賞 | 兄が造り母愛用の針箪笥共に亡き後かたわらに置く |
| 加 藤 ま さ | 第17回 奨励賞 | 早々と雨戸を繰りて開け放ちみかんの花の香り入れたり |
| 桃 澤 幹 子 | 第17回 奨励賞 | 植え付けて未だ根着かぬ早苗田を五月の台風波立てはじむ |
| 石 橋 澄 子 | 第17回 奨励賞 | まなこより溢るるひかり奔らせて志功還り来 ねぶた近づく |
| 纐 纈 信 子 | 第17回 奨励賞 | 遺りたる萬葉集古義に手触れゐて父百歳のつぶやきを聴く |
| 全 曙 湖 | 第17回 奨励賞 | 山ゆりのしづくに映る幼き日いつの日たづねん白髪ふえしに |
| 北 島 ゆかり | 第17回 奨励賞 | 不思議だな誰かがいると眠れるとふとつぶやいた病床の父 |
| 岸 田 玲 子 | 第17回 奨励賞 | 老い吾等生涯自立よ食卓に野花など挿しシャキッと暮す |
| 長谷川 久 | 第17回 奨励賞 | 手放すと決めたる土地の実生辛夷あまたの蕾つけて伐らるる |
| 矢 野 ひ で | 第17回 奨励賞 | 食糧の乏しき時代生きし父その好物の一つをも知らず |
| 百 瀬 享 | 第17回 奨励賞 | 営業で就職したる子の靴の底擦り切れて穴のあきいる |
| 松 澤 玉 恵 | 第17回 奨励賞 | ガーリックの匂いかすかにただよわせ午後の職場に急ぐわかきら |
| 牛 山 求 女 | 第17回 奨励賞 | 古希過ぐる吾らと共の終熄か年毎荒るる田畑見放くる |